vol.16 ふぞろいの野菜たち

初めての海外旅行は、今からもう10年以上も前になります。
当時スペイン語を勉強していた私はスペインの一般家庭にお世話になりながら、1ヶ月間語学学校に通いました。


ある日の夜のこと、食事の準備を手伝おうとすると、「じゃあサラダの準備をして」とレタスを渡されました。ちょうど駐在で私と同じ家庭で寝泊りをされていたもう1人の日本人とともにレタスを洗おうとすると、中からわんさとアブラムシが出てきました。当時の私はオーガニックのことも何も知らない、ごく普通の日本の大学生です。もう1人もごく普通の日本のサラリーマン。二人は「ぎゃー、こんなの食べられない・・・」と大騒ぎをしてしまいました。そんな私たちに、その家のスペイン人やその他下宿していた外国人たちはみな口を揃えて、「そんな虫もつかない野菜はプラスチックだ、洗えばいいだけだろう。」と一刀両断。この日本人たちは何を騒いでいるんだ、という反応でした。私たち二人はその反応にもう一回驚き、、、その家は別にオーガニックのものを買っていたわけでも何でもないのですが、日本に比べてずっと使われている農薬の量や濃度も違ったのでしょう。そして消費者の態度も。
そうして考えると、ヨーロッパの市場に並んでいる野菜や果物は、日本のようにピカピカしているものはほとんどありません。新鮮なのと、あのテカテカ輝いているのとは全く別物です。それが証拠に日本で普通にレモンを買って、使わずに冷蔵庫に入れておくと、それこそプラスチックか一生腐らないのかと思うほどずっと同じ状態を保っていますよね。そう考えるとその表面には何がついているのだろうということになります。
フランスのマルシェを思い浮かべると、それがオーガニックだろうとそうでなかろうと、例えば梨などは表面に傷があるのも当たり前だし、大きさもばらばら。というのも量り売りの文化が根付いているからでしょう。大きいもの小さいものが混ざっても、重さで払うのであれば買う側も納得です。そもそも自然にできるものは、どれ1つとっても全く同じものなどありません。色も形も大きさも本当に見事に違います。だからこそ生命だといえるし、美しいと感じます。卵なんかも同じです。ケースに入れられたパックの卵を買うと、サイズが整えられているので卵ってそういうもんだと思わされがちですが、鶏小屋で卵を集めてみれば一目瞭然。バラエティ豊かです。よくもまあこんな大きなのが産めたなあと思うものから、あれ?途中でひと休みしたのかな?と思えるような形のものとか。
もう一度いいます。自然が造るものは何一つとして同じものはないのです。
だから、農家の人が規格にあうように、収穫したきゅうりやトマトを選別し、それぞれの箱に入れ、規格に合わないものは出荷できなかったり、買い叩かれるという話を聞くと理不尽このうえなく思います。
無駄な時間に、無駄なコスト。
「虫もついてない野菜なんてプラスチックだ」という反応が普通に出る世界とは対極なこの現実にもっとたくさんの人に気づいてもらいたいと思っています。虫は洗えば済むけれど、農薬は洗ってもそう簡単には落ちないのですから。

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